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戦国武将討死列伝(自害・刑死アリ)22

列伝其の二十二『飯富虎昌<オブトラマサ>』

 もはや若(武田義信)とお屋形様(武田信玄)の双方のすれ違いの溝は修復不能なまでに悪化している。
 今川を攻めたいお屋形様と今川から輿入れした正室を持つ若とでは、根本的な部分で相いれないのだ。利を優先するか義を持って生きるか。突き詰めればそこなのだ。
 しかし、とうとう若は謀反の決断をされた、傅役として儂はこの若の為に死なねばならない。
「飯富兵部<オブヒョウブ>(虎昌のこと)もはや父上とはわかりあうことなどできぬ。お主はついてきてくれるであろうな。」
「はっ。この飯富兵部の命は義信様の為に。」
 この一連の会話は、弟の飯富三郎兵衛<オブサブロウビョウエ>(のちの山縣昌景)に筒抜けとなる様にさりげなく匂わせていたのだ。
(1565年)程なくして決起の前に計画はお屋形様の知ることとなった。
「飯富兵部よ。その方が義信にけしかけたのか?義信がその方を焚き付けたのか?事の真相をこたえよ!」
「恐れながらこの兵部が企みし謀反に御座います。義信さまは某が担いだみこしに過ぎませぬ。さあ、この首を刎ねてくだされますようお願い致します。」
「望みとあらば致し方あるまい。飯富兵部の首を刎ねい!」

『飯富虎昌』刑死